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【5分で分かる】「デジタル人民元」にありがちな誤解(1/2)

 近年、「デジタル人民元」なるワードをよく見かけるようになった。どうやら、北京等5都市において、「デジタル人民元」の試験運用を行っているらしい(2020年5月の時点)。ネットや本でも、「デジタル人民元」の情報が氾濫している。

 例えば、「ブロックチェーンを使った先進的な取り組み!」、「中国はブロックチェーン技術の最先端だ!」、「仮想通貨が法定通貨を席捲?」、「米ドル体制への脅威!」、「日本も負けてはいられない(キリッ」。

 こうした「デジタル人民元」の記事・報道には誤解・間違いが多いため、以下でそれを記述していく。

【要約】 

〇 中国は確かに、「国家が管理するブロックチェーン技術」を社会システムへ応用できないか研究を行っている。

〇 だが、デジタル人民元ブロックチェーン技術は採用されていない。当然、仮想通貨とも関係がない。

〇 デジタル人民元のおかげで、中国国内の決済手段が増え、国民からみた決済の利便性が向上する。だが、国際的な決済手段とは無関係であり、米ドル基軸通貨を脅かすこともない。

〇 先進国においては、わざわざ中央銀行がデジタル人民元を発行しなくとも、同じサービスを商業銀行の預金通貨(銀行口座にある、商業銀行が発行するデジタルなお金で)で実現可能であり、こちらの方が、既存の決済システムへの変更も少なく、シンプルで低コスト。先進国が中央銀行デジタル通貨を採用するメリットは殆ど無い。

〇 現に、欧米では、商業銀行口座のデジタル決済の利便性が高まっており、広く普及している。一方、中国では、商業銀行の口座を保有する人の割合が少ないため、商業銀行サービスの利便性向上だけでは、国民全体でみた利便性の向上には繋がらないといった事情がある。

〇 結論として、デジタル人民元は、あくまで未熟な銀行・貨幣システムを補完する立ち位置。アイデア・技術面でも目立った革新性は無く、運用コストや確実性の面でも疑問が残る。

 

 具体的な内容は、2/2で記述することとします。また、商業銀行の預金通貨については、以前の記事で解説しています。

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