みかんとコーヒー

金融/政治/その他

社会現象データを統計学が扱うことへの考察

 統計学を大学で「齧る」と、この世界は全て正規分布で出来ているかのように錯覚する。 そこまでいかなくとも、「中心極限定理のお陰で、平均や分散という概念は常に有用」というとんでもない勘違いをしたままの人間が世に放たれているのは事実だ。

 これは、初歩の統計学では正規分布までしか扱わないことや、往々にしてその難解な前提を理解できないことに起因している。

 個人の理解力の欠如にも落ち度はあるが、教える方にも問題がある。理論の限界と前提を確り理解させなければ、「絵にかいた餅」を打って金を稼いでいると謗りを受けても否定できまい。

 そもそも、中心極限定理とは何なのか。

  「母集団」からランダムに一部のサンプル(「標本」)の取り出し、その平均(「標本平均」)をとるという作業を繰り返す。こうして得られた、作業の回数分得られた「標本平均」は、分布をみると正規分布しており、「標本平均」の平均は母平均に収束する。以上は「母集団」の分布に関係なく成り立つ。

 ここで、(あまり教科書に書いていないことで)素人が気を付ける点は以下である。

  1. 標本平均を多数集めなければならない。あなたの目の前にある標本の平均をとっても、それは1個の標本平均でしかない。だから、とりあえず持っているデータの平均をとって意味を見出せるなんて勘違いはしないほうがいい。まあ、あなたが持っている標本の平均が母集団のミニチュア版であることが分かっているとか、母集団が正規分布していることが分かっていれば別だけど。
  2. 仮に母集団が正規分布していない場合、あなたが持っている標本の意味するところはなんだろうか。正規分布しているかどうか分からない場合は、ノンパラを使えというが、多くの場合、とりあえず正規分布性を仮定していることの方が多いはずだ。その時思う。お前はなんで母集団の分布を知っているのだ。

2つ目の議論は、統計学を学び始めてからずっと疑問に思っていることであり、今の時点でも自分のなかで納得できる理解がある訳ではないが、現時点では以下のように整理している。

  • 母集団の分布が、「平均」が意味を持たない代表値となってしまう分布である場合、標本平均の平均が母集団平均に限りなく近づく形で収束するとしても、その収束した値は代表値ではない。
  • 母集団において「平均」が定義できない場合、収束する標本平均の平均という値は意味を持たない。

 重箱の隅をつついているように思われるかもしれないが、全くそんなことはない。株価・所得・会社売上・都市の人口等、社会的な現象に関するデータは正規分布しないことが示されている。

 あなたは、平均5%のリターンを20年維持している株を勧められたら迷いなく買うのか?日本の平均所得が400万円だといって、それを本当に「平均的な人の所得」だと思うのか?

 前者は、株価のリターンは正規分布しているという仮定や、常に社会情勢が変化するなかで、時間平均と集合平均が一致しない可能性を無視していることが問題だ。株価のリターンが21年目にマイナス50パーセントとなることもあるし、戦争が起きてその前の20年のデータなんて全く意味がなくなったり、あなたが観測しているある長い歴史の間独立だった事象が、次のある瞬間だけ相関を持つように変わることだってある。 後者は、そもそも所得がパレート分布しているであれば全体を表す代表値には全くなっていないから、代わりの指標を使うほうがベターだ(中央値や25%、75%タイル値やジニ)いう話だ。

 でも、社会現象のデータについて、平均(や分散)という値が意味を持たないことがある例も多いのに、なぜ全体的に見て、現代社会は平均や分散の概念にここまで拘っているのか。

 一つは、正規分布しない場合のデータへの対処法が確率していないからではないか。実際、正規分布していないデータは統計学では扱いにくいし、科学主義的な風潮のなかで、統計的な意味を持たない数字を持ち出すのは、自らの研究の信頼性を貶める結果にもなりかねない。

 二つ目は、こちらの方が大きいように感じるが、正規分布・平均哲学が広く信じられている宗教だからだ。

 啓蒙されし高度な現代人の多くは、身近に理解できない事象があることを認めたり、「分からない」としておくことは許されず、あらゆる不合理な仮定を置いて「科学的な」説明を付ける宗教衝動にどっぷり漬かっている。そういう人間が、代替できる便利な「科学的な」指標や哲学がないなかにおいて取りうる道は、間違っていても権威のある(その時代の)学説・教説を盲信することである。残念ながらこれはどの時代にも普遍的に起こる「伝統」であり、伝統を重んじるわが国においては、特にそういった姿勢は評価され続けるであろう。

 いま根本的に必要なのは、代替指標や哲学的な視点の提供という作業であるが、哲学・思想の重要性が軽視され、実際世界に影響を与えるような思想家や哲学者を全く生まない文化を維持させてきたこの国で、問題解決の糸口が生まれることはない。

 

 

【5分で分かる】「デジタル人民元」にありがちな誤解(1/2)

 近年、「デジタル人民元」なるワードをよく見かけるようになった。どうやら、北京等5都市において、「デジタル人民元」の試験運用を行っているらしい(2020年5月の時点)。ネットや本でも、「デジタル人民元」の情報が氾濫している。

 例えば、「ブロックチェーンを使った先進的な取り組み!」、「中国はブロックチェーン技術の最先端だ!」、「仮想通貨が法定通貨を席捲?」、「米ドル体制への脅威!」、「日本も負けてはいられない(キリッ」。

 こうした「デジタル人民元」の記事・報道には誤解・間違いが多いため、以下でそれを記述していく。

【要約】 

〇 中国は確かに、「国家が管理するブロックチェーン技術」を社会システムへ応用できないか研究を行っている。

〇 だが、デジタル人民元ブロックチェーン技術は採用されていない。当然、仮想通貨とも関係がない。

〇 デジタル人民元のおかげで、中国国内の決済手段が増え、国民からみた決済の利便性が向上する。だが、国際的な決済手段とは無関係であり、米ドル基軸通貨を脅かすこともない。

〇 先進国においては、わざわざ中央銀行がデジタル人民元を発行しなくとも、同じサービスを商業銀行の預金通貨(銀行口座にある、商業銀行が発行するデジタルなお金で)で実現可能であり、こちらの方が、既存の決済システムへの変更も少なく、シンプルで低コスト。先進国が中央銀行デジタル通貨を採用するメリットは殆ど無い。

〇 現に、欧米では、商業銀行口座のデジタル決済の利便性が高まっており、広く普及している。一方、中国では、商業銀行の口座を保有する人の割合が少ないため、商業銀行サービスの利便性向上だけでは、国民全体でみた利便性の向上には繋がらないといった事情がある。

〇 結論として、デジタル人民元は、あくまで未熟な銀行・貨幣システムを補完する立ち位置。アイデア・技術面でも目立った革新性は無く、運用コストや確実性の面でも疑問が残る。

 

 具体的な内容は、2/2で記述することとします。また、商業銀行の預金通貨については、以前の記事で解説しています。

jikanhayuugen.hatenablog.com

 

「デジタル通貨」は現金(貨幣)に代わる法定通貨とはならない。

 法定通貨は、「強制通用力」といって、相手が代金として受け取りを拒めないことを国家が保証することで、国内の取引の安全性・確実性を担保する。例えば、現金(貨幣)は法定通貨として、以下のように「強制通用力」を持つ。

  • Aさんからものを300円のリンゴを買って受け取り、その代金を支払わなければならないとしよう。あなたが300円の現金で支払いを済まそうとしたとき、Aさんは「嫌いなお前の300円は受け取れない。」とは言えず、どんなにイヤでも強制的に「ぐぬぬ」といいながら、300円を受け取らなければならない。これが強制通用力だ。
  • 一方、あなたが300円分のバナナで支払いを済まそうとしたとき、Aさんは「嫌いなお前のバナナは受け取れない。だからお前は代金を払っておらず債務不履行だ」といえる。日本においては、現金(円)以外のもの――バナナも米ドルも金銀にも強制通用力はない。
  • ちなみに、銀行振込やデビットカード、クレジットカード支払いは「円」での支払いではあるが、「現金」での支払いではない(どちらも銀行の預金通貨での支払いです)ので強制通用力はない。会社もあなたの給料を原則現金で支払うこととなっており、銀行口座への給与振込は合意の下でしか行えない。

 ここに、仮にある政府が、現金(貨幣)とは別に任意の「デジタル通貨」を作って、「このデジタル通貨を法定通貨とします!」と法律で規定したとしよう。

 でも法律で法定通貨として規定したころで、それが実質的に「強制通用力」を持つかはかなり疑問だ。例えば、以下のケースを考えてほしい。

  • あなたは「デジタル通貨」しか持っておらず、一方で店主は店主は携帯(または口座)を持っていないため、デジタル法定通貨を受け取れないとしよう。この場合、法律がなんと言おうが、あなたは物理的に支払いができないので、買い物はできない。店主は「受け取りたくても受け取れねえ。ぐぬぬ。」となる。

 このような場合、デジタル通貨に強制通用力があるとは言えないだろう。つまり、「誰でも支払える・受け取れる状態」がなければ、強制通用力を担保できないのだ。

 「誰でも支払える・受け取れる状態」は、現金(貨幣)では、かなり高い基準で担保できる。貨幣は、電池切れも技術的な問題も起きないし、相手の状態(携帯を持っているか否か等)にも左右されない。デジタル通貨でこれを担保するためには、誰もがネットワークに繋ぐことができる携帯およびAPPを持っていないとならず、貧しい人や田舎において、この状態を満たすにはハードルが高い。

 こうしたことから、法的・取引実務的な安全性を考えれば、デジタル通貨を法定通貨として機能させることは不可能であろうと考える。 

 但し、「納税ができる通貨」または「限られた条件において強制通用力がある」など、いわば”準”法定通貨としての立ち位置として流通することはあり得る。ただ、それを現金(貨幣)の完全な代替や上位互換と認識するのは大きな間違いであろう。

 

 

【所感】日本語コンテンツの衰退

 英語が世界共通言語としてその存在感を増すにつれ、新たな技術や知見に対応する日本語の用語・情報・議論が乏しいために、質の高い知的活動を行うために英語を用いざるを得ない状況が生まれつつある。実際、前記事で書いたブロックチェーンや、私の趣味であるDTMについてもそうだが、英語での情報が、鮮度が高く圧倒的に豊富で分かりやすい。

 英語の経済・文化圏の大きさを考えれば、それ自体は抗えない潮流であるが、日本語を第一言語とする人間(文化圏)が英語の情報を上手く取り込んでいけば、英語の経済・文化圏に飲み込まれるということには必ずしもなりはしまい。

 実際、明治期には多くの専門的な文献が翻訳され、またその過程で既存の日本語の概念形態に溶け込みやすい造語を生み出すことで、日本語使用者の間での効率的・創造的な意思疎通を軸とする社会の礎が作り出されていった。確かに、この方法は短期的には大きなコストとなったが、長期的に見れば、日本語だけで高度な意思疎通が可能となったいえる。

 一方、現在の教育制度は、国民全体が日本語に加えて英語を学ぶことで、英語を使用する知的活動の質を担保する方法を取ろうとしている。しかし、全ての個人が英語の学習するコストや、第2言語による意思疎通の非効率性・非正確性などに鑑みると優れた方法とは言えないように思える。特に、教育制度の不備、実際的な生活に使用する必要性に乏しいことなどから、多くの人間の英語学習の習熟度は低い状態に留まっており、高度な知識を英語で取り入れることのできる人材は多くない。

 こうしたなかで、現在の日本語コンテンツは、積極的に欧米の先進知識を翻訳しているようには思えず、概念の日本語化も進んでいない(カタカナ訳は日本語化ではなく日本語の英語化でしかない)。結果的に、多くは新たな技術や深い知見を得る機会を奪われるばかりか、日本語を用いた知的活動の幅が狭まっていることすら客観的に認識する能力が失われつつあるように思われる。

 将来的には、日本語は日常会話レベルの意思疎通しか行えない魅力の低い言語として衰退していくだろうし、日本語のコンテンツも存在する意味を失っていくだろう。こうした状況はなかなかに痛々しい。なんとか抗い続けたいものであり、当ブログ執筆の動機もそこにある。

 

【仮想通貨(Ethereum)・ステーブルコイン】DAIの米ドルペッグの仕組み

〇 まえがき

 

  現在、仮想通貨の情報について深い知見を得るには、基本的に英語で書かれた文献(Whitepaper等)を読むしかない。こうした状況は、主要報道機関の怠慢とも相俟って、ブロックチェーンに対する市井の人々の理解を狭める原因となっている。本記事が、ブロックチェーンに関する知識・議論の幅を深める一助になれば幸いである。

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【テレ朝news】アメリカのコロナデモの報道の内容を補足します

【テレ朝news】

この報道は、背景知識のない視聴者に、誤った情報および意図的な印象操作を引き起こしてしまう可能性が高いと判断したので、以下に問題点を述べます。皆さんもニュースを見るときは気を付けましょう。

 

① デモ隊の排除はこの訪問のためだったのでしょうか。(1:57)

 事実として曖昧であり、報道内容に責任を持てないようであれば、この主張は報道に含めるすべきではない。情報を知らない視聴者に意図的に判断を誘導するようにしておきながら、事実を確かめないのは、怠慢との誹りを受けても仕方がないだろう。せめて、報道したいなら、関係者にインタビューのうえ、回答がなかった等ファクトチェックの努力をすべき。

 

② (トランプ大統領は)テロ組織に指定すると意気込んでいます(2:24)

 5月30日にTwitterにて発言(に投稿)、とすべき。意気込んでいるというのは主観的な表現であり、報道には、客観性の高い言葉を用いるべき。 

"The United States of America will be designating ANTIFA as a Terrorist Organization."

https://twitter.com/realDonaldTrump/status/1267129644228247552?ref_src=twsrc%5Etfw%7Ctwcamp%5Etweetembed&ref_url=https%3A%2F%2Fd-18806506551145594263.ampproject.net%2F2005150002001%2Fframe.html

 

③ Antifaとは、アンチファシスト活動の略で、ネオナチや人種差別に強く抗議する勢力を指し、特定の組織を指すわけではありません。(2:30)

 特定の組織を指さないというと、「思想を持った個人が自然発生的に集まった」というニュアンスが色濃く出るが、厳密には異なる。彼らには旗も集会もある。ただ明確なリーダーはおらず、厳密に組織化されてはいない左派集団といったところだ。

 ダートマス大学講師で、「Antifa」の著書のMark Brayによると、活動内容は、「啓蒙活動、コミュニティの構築、ファシストの監視、ファシストのイベントを中止するための圧迫、自己防衛訓練の企画、(必要になった際の)物理的な極右派への対峙」とある。ここまで言えば、視聴者の皆さんも大体の雰囲気は掴めるのではないか。

 "Antifa is not a unified group; it is loose collection of local/regional groups and individuals." 

    https://www.adl.org/resources/backgrounders/who-are-antifa),

 "organize educational campaigns, build community coalitions, monitor fascists, pressure venues to cancel their events, organize self-defense trainings and physically confront the far right when necessary." 

https://eu.usatoday.com/story/news/2017/08/23/what-antifa-and-what-does-movement-want/593867001/

 

④ トランプ政権になって、大統領自身、人種差別をあたかも助長・容認するような発言を繰り返してきました。(7:55)

 具体的な発言内容には触れていないが、一体どういった発言か具体的に述べるべきだ。「あたかも」を使用することで、記者の主観にも関わらず、既成事実であることを示唆する内容になっている。

 

⑤ デモ隊の鎮圧を協会で聖書を持ちながら宣言する(8;10)

 完全なる間違い。発言内容は、「アメリカは偉大な国だと私は思う。最も偉大な国だ。さらに偉大になる。時間はかからない」等。その他の発言はない。政治的なパフォーマンスであることは間違いないが(政治家の行動で政治的でないものがあるかどうかは疑問だが)、だとしても、これはフェイクニュースと名指しされても仕方がないレベルである。

 

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⑥ (トランプ大統領を批判した司教の)政治が宗教・教会を利用するなというメッセージで、これを見て、これが本当にアメリカの民主主義かと驚愕を覚えた(9:14)

 背景知識がない人には、トランプのせいで、アメリカが政教分離を実現できない民主主義に陥ったかのように伝わってしまうが、それはあまりにミスリーディングだ。

 そもそも、アメリカは、その歴史上、キリスト教プロテスタント)信者によって建国されており、自由・民主主義といった政治的な信念の下に、宗教的な影響が色濃く反映されている。そのため、合衆国憲法上は政教分離を規定し、多民族・多宗教国家を標榜しているにも関わらず、キリスト教が密接に絡まざるを得ないいう非常に微妙な事情があるのだ(いいか悪いか別にして)。そのため、これを、トランプ大統領の民主主義に対する冒涜という文脈で片づけるのは愚かであり、間違いである。

 もし今更これに驚愕を覚えたというのは、アメリカ政治について無知であることの告白でしかなく、実際、その無知のため司教のメッセージの解釈にも誤りが生じている。

 ワシントン主教管区司教のマリアン・ブッディ氏が怒った意図は、「我々は、人種差別的のない世界を希求するデモ隊の意志に強い理解・共感を示している。今回大統領のパフォーマンスに教会が映ったことは、我々の意図するところではなく、我々はキリスト教の教えの下、非暴力と無慈悲の愛を求める」と、(彼女のなかで)キリスト教の精神とトランプ大統領の方向性が異なるを強調しているのであり、宗教分離自体の疑問視に力点は置かれていない。以下に念のため訳を示す。司教の心のこもった発言が、報道において浅薄な言葉に押し込まれるのがやりきれない。

 

【意訳】

 ・はっきり言わせてほしい。大統領は聖書と聖なる言葉を、ユダヤ教キリスト教や教会の教義のアンチテーゼとなるメッセージの背景とすべく、氏の教区において許可なく、利用した。そのため、警官が催涙弾や軽装備(Light Gear)を使用するなどして、デモ隊を排除した。私はとても激怒した。大統領は私の教会に来て祈りを捧げなかった。また、アメリカが直面している痛みにをついて触れ、認めることがなかった。その痛みとは、特に、有色人種の人たちが、これまで公権力を持つ人間が彼らの尊い価値を認めたことがあったかと思い悩み、400年の人種差差別や白人至上主義へ終止符を打つことを正当に要求していることである。我々は、世界に知ってほしい、ワシントン教区は、キリストやキリストの愛に従っており、怒りを生むような大統領の発言からは距離を取っている。我々は非暴力や献身的な愛を持って生きる人間に従う。我々はジョージフロイド(デモで亡くなった人)やその他の人たちが求める正義に賛同する求める。・・・私は自分が見た光景が信じられない。トランプ大統領のニュースを同僚とみて、その後、何が起こっているのかについてたくさんの電話やメールで問い合わせがあった。・・以下略(ワシントンポストの記事がなく、CNNのビデオニュースより意訳)

https://edition.cnn.com/videos/politics/2020/06/02/mariann-budde-bishop-st-johns-trump-bible-photo-ac360-vpx.cnn

 

⑦ 基本的に、日本のメディアのアメリカに関する報道は、アメリカ左派(民主党)よりの報道であり、『全く』中立ではない。

 アメリカの右派(共和党)と左派(民主党)系メディアの対立は日本では想像できないほどに凄まじい。共和党よりのFOXを除いた、CNN,MSNBC,WASHINTON POSTなど大半のメディアは左派系であり、特にFOXとCNNの報道は同じ事件を報道しているか分からないほど対立・2極化している。時には相手のニュースを引用してその偏向ぶりや間違いを批判することもあるくらいだ。そのため、両派の報道をみないと全体像がつかめないことは容易に想像がつくだろう。

 それにも関わらず、この報道を含め、日本のほぼ全ての報道は、CNNやWASHINTON POSTなどの報道を鵜呑みにして(または意図的に取り上げて)、あたかもアメリカ多数派の意見として報道している。2016年度の大統領選時には、民主党寄りの報道を垂れ流したあげく、トランプ当選の結果に勝手に狼狽していた。ロシアゲートにおいても、民主党プロパガンダ(選挙)戦略と右派の対立という構図に気づきもせず、まるで一方的に右派の政治的失態を問題視する報道が目立った(結果、あれば一体何だったのかよくわかっている日本人は殆どいない)。

 現在においてもこの構図は変わっておらず、基本的に日本の大手メディアはCNNの後追いをしている。実際、このニュースも下のようなCNNの海外ニュースをつなぎ合わせて、多くの間違いとあたり障りのない解説を加えただけに過ぎない。

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なお、参考までに、ほぼ反対のことを言っているFOXの報道を張っておきます。

youtu.be

 

日本の(ゴミみたいな)報道に関する状況が改善することを切に願っています。

 

みかんとコーヒー

 

そもそも「デジタル円(中央銀行デジタル通貨)」とは何か。

 近年、「デジタル円」または「中央銀行デジタル通貨」という言葉がメディアを賑わすようになった。これに対する私の最初の反応は、「何を言っているんだ。すでに円はデジタル化しているではないか」だった。

 なぜなら、私が銀行に持っている口座の円はデジタルで表示されており、お金の振込などもATM、パソコンまたは携帯等で行われる。給料日になると会社から円がデジタルで振り込まれる。そう、既に紙幣とコインではない円が、デジタルで流通しているではないか。

  確かにその認識は正しい。しかし、実は、銀行口座にデジタルで表示されている円は「預金通貨」(銀行から現金を受け取れる権利)であり、形ある紙幣やコインで構成される「現金」(※)とは異なる「円」であるのだ。

 ※厳密には、「現金」は日銀当座預金という形でも存在しており、そちらはデジタル化されている上に、「現金」のうち圧倒的な量を占めるが、この部分はやや複雑なので省略。

 

 簡単な思考実験をしてみよう。ATMに現金を10万円振り込むと、銀行口座残高が10万円増える。あなたは増えた銀行口座残高の分、アマゾンで余計に買い物をすることができる。一方、銀行も、ATMの中に物理的に存在する10万円を、好きに使うことができる。

 待てよ、あなたが10万円を振り込んだだけで、経済全体でみると2倍の20万円分が使用できるようになっていないか。お金の量が2倍になったということなのか!?

 冷静に考えてほしい。そんな訳がない。少しでも会計に通じた人なら分かると思うが、銀行からしてみれば、「銀行口座の残高」とは、「要求された場合に支払わなければいけない現金の額」すなわち、「負債」なのである。振り込みによって、銀行は「現金」を受け取るとともに、あなたに、同額の「負債」を負ったわけである。この「負債」を一般に「預金通貨」と呼んでいる。

 すなわち、あなたがアマゾンで買い物するときには、「現金」で決済しているのではなく、銀行の「負債」(「預金通貨」)で決済している。すなわち、あなたの友人が銀行振込でお金を送るよ、といっているときは、実際には「現金」が送られてきている訳ではなく、「銀行が友人に対して負っている負債の額を減らして、銀行があなたに対して負っている負債の額を増やすよ~。これで実質「現金」のやりとりしたでしょ?」ということなのだ。 なお、異なる銀行間でも、この「負債」のやりとりが滞りなく行われているよう、制度設計がなされている(※)。

 ※ただし、異なる銀行間での決済については、最終的には「現金」(日銀当座預金)の授受がなされるのであるが、詳細は後述する。

 ATMに行けばいつでも「預金通貨」の額だけ現金を受け取れる世の中では、こうしたことを考える機会は少ないかもしれない。だが、一般消費者の我々がデジタルに「現金」を送金したことはないのだ。

 そのため、「何を言っているんだ。すでに円はデジタル化しているではないか」というのは、厳密には間違いで、「預金通貨(銀行の負債)はデジタル化しているが、我々が使っている現金(貨幣やコイン)はデジタル化していないので、これをデジタル化する」ということなのだ。

  以上をまとめると、「デジタル円」または「中央銀行デジタル通貨」の試みとは、「紙幣やコインをデジタル化して物理的に持つ必要がなくなる世界を作ろう」、そうすれば「便利になってもっとみんなお金を使うんじゃないか」ということだ。

 

 これを前提として、より厳密で細かい仕組みや実現可能性等について、下のとおり箇条書きにします。時間がないので、今後、新たな金融政策の可能性等も含めて加筆します。

  • 現金は、中央銀行(政府)の負債のことである。我々は、中央銀行(政府)の負債を、「現金」として決済手段として利用している。これは預金通貨が商業銀行の負債であることと似ている。
  • 現金は、①中央銀行預金と、②貨幣およびコインで構成される。
  • ①はすでにデジタル化(日銀ネット)している。①は、商業銀行間で、資金の振替を行う際に用いる現金であり、中央銀行が運営するシステム上にデジタルな数字として存在している。
  • なお、個人や法人間では、商業銀行の負債である預金通貨が決済手段としても用いられていることを上記に述べたが、異なる商業銀行間で個人・法人の資金の振替がある場合は、預金通貨だけでなく、下記のとおり、①の振替をもって決済が確定(ファイナリティ)したとする。

   (例)

   A銀行のαさんがB銀行のβさんに資金を送る場合を考えよう。まず、αさんはA銀行に100万円預ける。αさんのA銀行システムには100万円のA銀行負債が記録される。A銀行は受け取った現金100万円を日本銀行に預け、A銀行の中銀口座システムには100万円の現金(中央銀行負債)が記録される。

   αさんが100万円をβさんに送る指示を出すと、まず、αさんのA銀行システムに記録された100万円の負債を減らすと同時に、βさんのB銀行システムの負債が100万円増加する。ただ、それだけだと、B銀行は100万円分の負債だけが増えることとなり、取引するだけでただ負債が増えることになってしまう。そのため、この取引と同時並行的に、A銀行が中央銀行システムに持つ現金をB銀行に付け替える行為を行う。この一連の流れを経て、B銀行システムのβさんの口座には100万円の記録が、B銀行の中銀口座システムには100万円が存在することとなり、振替が完了する。

  • ②は、一般の国民や法人が日々の決済を行う目的で存在している中央銀行の負債である。別に預金通貨を使っても構わないが、サービスの利便性が低いことなどから、日本では、この形ある現金が使われることが好まれる。
  • ②をデジタル化することは、一見、既にデジタル化している①のシステムの延長線上にあるようにも思えるが、①の利用者は金融機関に限られる一方、②の利用者は全国民、全法人となるため、①を基にした場合、膨大なコストが発生する。
  • ②のデジタル化にあたって、コストの面を勘案すれば、①とはまったく別の思想、技術、仕組みを採用することが必要だろう。その場合、いわゆる楽天ポイントや、ラインポイントのような仕様になることが予想される。この際、規模の増加に伴って指数関数的にシステム全体の演算量が跳ね上がるブロックチェーン(私用台帳/分散台帳)を使用することは、現実性や必要性の観点からも疑問符が付く。そのため、昨今の「ふぃんてっく」の最先端技術とは別の話として整理するのが合理的。
  • ②のデジタル化による恩恵は、使いやすくなることで多くの人が使うようになる、だれがどれだけどのように使っているかわかるようになる、今までとは違った法人・個人に影響を与えられる金融・財政政策が生まれる、国税等各種行政手続きの簡略化、とまあそれなりにあり、中国人民銀行が導入するとの報道を前に、国際的な競争力の観点から浮足立つ気持ちもわかる。
  • ただ、銀行制度が広く普及しており、預金通貨を決済の手段として広く用いることができる先進国に本当にデジタル円(中央銀行デジタル通貨)が必要なのか。銀行口座を持てない人が多い(上に人民をコントロールしたい)中国やアフリカ諸国等の発展途上国、人口が少ない東欧や北欧諸国においては、導入する利便性や意義もあるとは思うが、日本においては、まず預金通貨のサービスの利便性を高めれば十分なのでは、と思う。
  • 具体的に、日本の預金通貨決済にかかる主な不自由は以下のとおり。単に決済手段を増やすよりはよっぽど国民・法人の利便性にかなうはずだ。
    • 複雑な銀行手続き(はんこ制度等)
    • デビットカードやコンタクトレス決済が普及していない
    • ケータイ等で簡単に送金できない
    • 銀行振込手数料が高い
    • 現金の引き出しにお金がかかる
    • 送金が24時間行われない
  • ちなみに、私も海外でそのデビット/クレジットカードの利便性、アプリ送金の簡単さ等から現金を殆ど使わない生活を実際に体感しています。日本に住んだことがあるイギリス人、スイス人、インド人等が(本当に)口を揃えて「日本の生活は最高だけど、金融と通信はマジで終わっているな」というので、心が打ち震えた記憶がありますね。なお、日本の通信料金がバカ高く公共無料WiFiもあまりないことは、外国人が持っているハイテク日本のイメージを一瞬でぶち壊すことにかなり貢献してます。

 以上です。検索してもわかりやすい記事が出てこないから4時間もかけて書いたのですが、本来こういう内容を分かりやすく纏めて国民に知らせるのが、記者やライターの仕事だと思います。ネット上に窒素のように浮遊する、分かる風何も分からない無駄記事の数々は、人々の労力、好奇心と電力を浪費し地球環境に有害な影響を与えるため、その認定を受けた場合、アクセス回数だけ、GretaさんにHow dare you? と言われ続ける刑事罰を導入することを提言します。当ブログはほぼアクセスがなさそうなので、私は5回くらいで済みそうです。はい。

 次回もお楽しみに。